無期雇用派遣の留意点
無期雇用派遣労働者とは
そもそも無期雇用派遣労働者とは、雇用契約期間に定めがない派遣労働者のことです。一つの派遣就業が終わっても雇用は継続されます。
毎年度6月1日現在の状況をまとめた厚生労働省が公表する労働者派遣事業報告書によると、無期雇用派遣労働者は毎年約1割ずつ増加し、令和4年6月1日の報告書では、派遣労働者約186万人のうち、約4割が無期雇用の派遣労働者となっています。
無期雇用派遣労働者の二つのタイプ
つぎの二つのタイプに分けることができます。②のタイプの場合、派遣労働者が留意すべき点を「まとめ」で後述します。
①正社員
労働者派遣事業の許可事業所は、いわゆる人材サービス会社(派遣会社)だけではなく、本業が別にあり、付随的に労働者派遣をしている事業所があります。多くの場合、業務の都合上派遣形態を取る必要があるため、正社員を派遣しています。そのため、派遣業務が終了すれば、事業所の通常業務に従事します。
②正社員以外
正社員と同じ労働時間であっても、正社員の就業規則などが適用されない労働者や、短時間労働の期間の定めのない派遣労働者です。採用時から無期雇用である場合のほか、派遣の期間制限(3年間)を超える際に有期雇用から転換する場合があります。
無期雇用のメリットとデメリット
派遣先のメリット
派遣先は、派遣法により3年を超えて派遣労働者を受入れることはできません。しかし、受け入れる派遣労働者の派遣元での雇用契約が無期である場合、その期間制限はなくなります。つまり、無期雇用労働者であれば、派遣先は、3年を超えて必要な期間、同じ労働者を受入れることができます。
※期間制限には事業所単位と個人単位がありますが、ここでは詳細な説明は省きます。
派遣元のメリットとデメリット
派遣先のメリットと同様、派遣労働者を同一派遣先に3年を超えて派遣ができることがメリットと言えます。一方、既存の派遣先との派遣契約が終了した場合であっても、労働者を雇用し続けなければならないというリスクがデメリットと言えます。
派遣労働者のメリット
労働者にとっては、派遣就業期間が終了しても雇用契約は継続されるため、雇用が安定するというメリットがあります。
雇用安定措置としての無期雇用転換
派遣労働者の有期雇用から無期雇用への転換は、同一の組織単位への派遣が3年を超える見込みがある場合の雇用安定措置の一つの方法でもあります。
派遣元事業主は、個人単位の期間制限(同じ組織単位で 3 年)に達する見込みの派遣労働者に対し、派遣労働者が引き続き就業することを希望する場合は、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
① 派遣先への直接雇用の依頼
② 新たな就業機会(派遣先)の提供
③ 派遣元事業主において無期雇用
④ その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置
このうち、①を講じた場合に、直接雇用に至らなかった場合は、その後②から④のいずれかを講ずるものとされています。(1年以上3年未満は①から④のいずれかの努力義務です。)なお、上記の雇用安定措置を講ずる場合は、派遣労働者の希望を聴取することになっています。
まとめ
派遣の求人に応募する際は、雇用形態が「無期雇用」なのか「有期雇用」なのか、必ず確認しましょう。無期雇用であっても、派遣先が限られていたり、本業がない派遣会社であれば、一つの派遣就業が終わっても新たな派遣先が見つからず、派遣元での継続雇用も困難となり、名ばかりの無期雇用となるおそれがあります。
また、有期雇用から無期雇用に転換する際は、前述のような派遣先と派遣元のメリットのために、安易な無期雇用の転換とならないよう希望を伝えましょう。
いずれにしても、雇用契約書は確認しましょう。