労使協定(労働者派遣法)の地域調整
「労使協定(労働者派遣法)の資料解説」のとおり、一般労働者の平均賃金を選ぶと、次は地域ごとに値を調整をします。
地域調整とは
令和5年8月 29 日付職発 0829 第1号「令和6年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第 30 条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について」(以下「通達」とします。)の別添資料3として、職業安定業務統計による地域指数があります。都道府県別とハローワーク別になっていて、毎年度変わります。
統計資料の賃金を一律に使うと地域の物価水準が反映されないため、通達別添資料1又は2で選択した金額を、この地域指数により調整します。
地域は、「協定対象派遣労働者の派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地」を含む都道府県又はハローワーク別の地域指数を選択し、労使協定に定めます。また、一つの労使協定において、都道府県及びハローワーク別の地域指数を使い分ける場合には、その理由を労使協定に記載します。
《使い分ける場合の例》
地域調整については、埼玉県、千葉県、東京都の派遣先で派遣就業を行うことから、通達別添3に定める埼玉、千葉、東京の指数を使用するものとする。ただし、東京都、千葉県は複数の市区町村の派遣先において就業を行うことから、都道府県別の指数を使用し、埼玉県は主に●●市内の派遣先において就業を行うことから、ハローワーク●●の指数を使用するものとする。
なお、当然のことながら、一般賃金の引き下げを行う目的で恣意的に地域指数を使い分けることは、認められません。
一方、複数の都道府県に労働者派遣を行う場合、最も高い地域指数を使うことで、一つにまとめることも可能です。
《まとめる場合の例》
地域調整については、派遣先が埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県が想定されることから、通達別添3に定める埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の各都道府県の指数のうち、最も高い指数となる東京都の指数を使用するものとする。
最低賃金である場合の再計算
地域調整後の基準値が、地域別最低賃金又は特定最低賃金の額を下回っている場合、つぎの指数により読み替える必要があります。
(指数:令和6年度の指数。通達本文 第2の1(1)②)
0年 | 1年 | 2年 | 3年 | 5年 | 10年 | 20年 |
100.0 | 115.1 | 126.2 | 128.1 | 134.9 | 147.0 | 183.1 |
例えば、賃金構造基本統計(通達別添資料1)の「1385 クリーニング職,洗張職」は基準値が900円で、東京都で就業する派遣労働者の比較対象値として使用する場合、東京都の地域指数113.9を乗じると値は1,026円(端数切り上げ)になります。これは、東京都の最低賃金の1,113円を下回るため、最低賃金を基準値とします。
0年(基準値) | 1年 | 2年 | 3年 | 5年 | 10年 | 20年 |
1,113円 | 1,282円 | 1,405円 | 1,426円 | 1,502円 | 1,637円 | 2,038円 |
まとめ
地域指数を都道府県又はハローワークの値のどちらを使用するかは、事業所ごとの個別の事情により選択すれば良いと考えます。ただ、地域をあまり限定しすぎると、労使協定の有効期間中に新しい派遣先ができた場合、地域調整を追加する必要が生じますので注意してください。