労使協定(労働者派遣法)の資料解説
一般労働者の平均賃金を調べる
賃金構造基本統計と職業安定業務統計
労使協定方式により派遣労働者の賃金を決定する際、派遣労働者が就業する派遣先の地域において、従事する業務と同種の一般労働者であって、同程度の能力及び経験を有する者の平均賃金と同等以上にする必要があります。
その具体的な金額を令和6年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について(以下「通達」とします。)の別添資料1と2で示されており、どちらかの資料を使用するかを選択します。特徴は以下になります。
賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金 (通達別添資料1) | 集計対象:企業規模10人以上の企業)の無期雇用かつフルタイムの労働者の「所定内給与額」及び「特別給与額(12ヶ月で除したもの)」を合算した額。職種が少ない。 |
職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(通達別添資料2) | ハローワークで受理した無期雇用かつフルタイムの労働者の求人賃金の下限額の平均を時給換算した額。職種が多い。 |
なお、令和5年8月28日の労働政策審議会労働力需給制度部会資料によると、全体の9割以上が職業安定業務統計の一般賃金水準を選択しています。
能力・経験値
別添資料は、職種ごとに「基準値に能力・経験調整指数を乗じた値」として、1年・2年・3年・5年・10年・20年と示されています。これらのうち、何年を使用するかについては、派遣労働者が従事する職務内容がどのくらいの経験値が必要なものかを考慮して、労使で決定することとされています。例えば、勤続1年目の派遣労働者の職務内容が高度なものであれば、5年や10年の値を選択するということもあり得ます。たまに従業員の経験年数をそのまま当てはめているケースがありますが、誤解のないようにしてください。
使用する資料の名称を記載する
比較対象の平均賃金を上記の別添資料1又は2から選択すると、労使協定に使用する統計名称を記載します。さらに職種により統計を使い分ける場合は、その理由を記載しなければなりません。統計を使い分ける場合の理由については、恣意的に派遣労働者の賃金を引き下げるためでないことが重要となります。また、職業安定業務統計(通達別添資料2)を使用する場合で、職種により中分類や小分類を使い分ける場合も同様です。
《例①資料の使い分け》
〇〇については、実際に支払われていた賃金額である通達別添1を使用し、△△については、派遣先が総合スーパーなどの大規模の店舗だけでなく小規模の店舗も想定していることから、業務の実態を踏まえ最も適合する職種がある通達別添2を使用するものとする。
《例②分類の使い分け》
××については、業務の実態を踏まえ最も適合する職種がある小分類を使用し、●●については、業務の実態から複数の業務に従事する可能性があることから中分類を使用するものとする。
まとめ
一般労働者の平均賃金の資料については、法改正があった令和2年度当初から、賃金構造基本統計調査と職業安定業務統計の2種類が示されています。このことが、労使協定をさらに難解にしているので、9割以上の利用がある職業安定業務統計だけを通達別添資料にするよう厚生労働省に要望したいです。
ちなみに、統計法(平成19年法律第53号)第2条第6項の基幹統計調査又は同条第7項に規定する一般統計調査に該当する調査などであれば、使用することができるのですが、ますます難解になるためこの記事では割愛しております。
《参考》厚生労働省HP 同一労働同一賃金
労使協定イメージ PDF版[683KB] Word版[219KB] ※令和5年1月31日公表版
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