労使協定(労働者派遣法)の締結方法

 労働者派遣法第30条の4第1項に規定する労使協定について、締結方法と過半数労働者の選出方法の重要性を、労働局の需給調整事業課の元課長補佐として指導監督を行った事例を紹介しつつ、解説します。

締結の単位

 労働者派遣法第30条の4第1項に規定する労使協定は、派遣元事業主単位又は労働者派遣事業を行う事業所単位で締結することが可能です。つまり、派遣事業所が数か所ある場合でも、派遣元事業主単位で締結するのであれば、一つの労使協定で足りることになります。一方で、例えば派遣事業以外の事業を営む支店や営業所は複数あるものの、派遣を行う事業所は1か所のみである場合は、事業所単位にした方が労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」とします。)を選出する場合の負担が少ないと言えます。(過半数代表者の選出方法は後述します。)

締結の相手方

 派遣元事業主は、派遣労働者の待遇を労使協定方式で決定するために、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合(以下「過半数労働組合」とします。)、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては過半数代表者と、書面による協定を締結します。ここで注意が必要なのは、労働者派遣に係る労使協定であっても、派遣労働者以外の労働者を含めた過半数でなくてはならないことです。

 筆者が労働局時代に労使協定の指導監督を行った際、「派遣労働者の過半数代表者」として締結した労使協定にかなりの頻度で遭遇しました。

 じつは、この過半数労働者の選出方法の重要度は高く、労働者派遣事業関係業務取扱要領にはつぎのように記載されています。

「過半数代表者が適切に選出されなかった場合には、法第30条の4第1項の協定とは認められず、派遣先の通常の労働者との均等・均衡による待遇を確保しなければならない。」

 つまり、選出方法が適切でなければ、労使協定方式は認められず、均等・均衡方式を取ることとなり、派遣元はもとより、派遣先においても対象労働者の情報提供を行わなければならないといった影響を受けることになります。

過半数労働者の選出方法

 適切に過半数労働者を選出するには、派遣労働者の同一労働同一賃金の労使協定を締結するために過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで、以下について留意が必要です。

  • 選出手続きは、投票や挙手の他に、労働者の話し合いや持ち回り決議など、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが必要です。また、選出に当たっては、派遣労働者などを含めたすべての労働者が手続きに参加できるようにします。
  • 会社の代表者が特定の労働者を指名するなど、使用者の意向によって 過半数代表者が選出された場合、その協定は無効です。
  • 派遣元事業主は、労働者が過半数代表者であることなどを理由として、労働条件について不利益な取り扱いをしてはいけません。

 また、筆者が労働局で指導監督を行った際、適正と認められない以下のケースが多くありました。

  • 投票などをメールの通知などで呼びかけ、返信がなかった人を「信任」したものとみなす。
  • 派遣労働者にのみ投票などを呼びかけ、全労働者の意向が確認されていない。

 派遣労働者は、自らの待遇について、派遣元事業主と意見交換する機会が少ない場合があります。そのため、過半数代表者を選任するための投票などと併せて意見や希望などを提出してもらい、これを過半数代表者が派遣元事業主に伝えることなどにより、派遣労働者の意思を反映することが望ましいとされます。

まとめ

 以上のように、労働者派遣法第30条の4第1項に規定する労使協定は、締結方法が重要な要素となっています。

 なお、労働者派遣法施行規則第25条の12では、「派遣元事業主は、法第三十条の四第一項の協定を締結したときは、当該協定に係る書面を、その有効期間が終了した日から起算して三年を経過する日まで保存しなければならない。」とされています。労使協定書と併せて過半数労働者の選出方法についても保存しておくと良いでしょう。

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